大龍王の『竜宮乙姫伝説』が残る究極パワースポット【布引の滝】

兵庫県の神戸市中央区にある布引の滝は、約1億年前に地下深くで生まれた花崗岩でできた六甲山中に、布引滝の源流「獺池(かわうそいけ)」から摩耶山・再度山の谷水を集めて、生田川を通り流れた水が岩の谷間から一氣に落下する神滝のことで、雄滝(おんたき)、夫婦滝(めおとだき)、鼓ヶ滝(つつみがだき)、雌滝(めんたき)の四つある滝を総称して「布引の滝」と呼んでいます。

布引滝は、縄文時代以前に龍神や弁財天などの多くの神の大先祖様となった布引滝の由来の民話『竜宮の乙姫伝説』があり、697年頃の飛鳥時代に、神変大菩薩の諡号を持つ日本最強の呪術師と名高い「役行者(えんのぎょうじゃ)」が砂子山に滝勝寺(現在は徳光院)を建立して布引の瀧で修行をしたと『滝勝寺縁起』で記され、768年には、布引滝の近くに大龍寺を創建した「和気清麻呂」が道鏡の刺客に襲われた際、谷に棲む大龍に救われたと伝わってる大龍王と縁が深い霊場(パワースポット)とされてきました。

布引滝の由来の民話『竜宮の乙姫伝説』

布引滝の由来の民話『竜宮の乙姫伝説』

大むかし、この国はどこへ行ってもいたるところ、見渡す限り葦の葉が生え茂っていたので豊葦原国(とよあしはらのくに)と云われていました。その頃には、この付近には、人はほとんど住んでいませんでしたが、とある一つの美しい滝のほとりの岩陰にある小さな一軒家に、一人の翁と一人の美しい娘との親子が住んでいました。娘は顔かたちが美しいばかりでなく、心のやさしい親孝行な人でした。

翁もまたこの一人娘を心から可愛がって、ぜひとも立派な娘に育てたいものと考えておりました。娘は、素直な性質で父親の言うことをよく聞きました。娘は父親の言葉にしたがって、毎日のように家の近くの滝つぼに入り、どうどうと音を立てて流れ落ちる滝の水に打たれて身を清め、一心不乱に修業しておりました。

この娘の修業の様子が神様に通じたのか、不思議なことが起こってきました。まず、娘は気が付いてみると、自分が何時間でも水の中に潜っていることができるのです。水の中を、あちらこちらと歩いたり泳ぎまわったりしても自由に呼吸ができるのです。いや、呼吸していなくても苦しくないのです。また娘は気がついてみると、自分が鳥のように空中に舞いあがることができるようになっているのです。しかも、本当の鳥のように素早く大空を飛んでいけるのです。何百里も離れている山や谷や川を、あっという間に飛び越えて、行き来することができるようになったのです。

それまで、美しい姿かたちをしていた娘の体は、龍神の姿となって、大空や大海を自由に飛びまわったり泳ぎまわったりすることができるようになったのです。龍神の姿になった娘は、大空を飛んだり、大海に潜って泳ぎながら、人々を苦しめていた悪魔や妖怪や化物を退治したり懲らしめたりしましたので、人々は大変助かり、この龍神に感謝して、大龍王さまといって崇めるようになりました。

大龍王は、おそろしい竜神の姿をして悪者を懲らしめるだけでなく、時にはやさしい女神の姿になって、たくさんの船の航海の安全を守り、船頭を助けましたので、船乗り達からは、海の女王さまといって尊敬されるようにもなりました。

龍神が人々の苦しみを救い、困っている人を助けたのは海や空でばかりではありません。陸地でも多くの人々を助けて、その家の仕事を大いに繁盛させたので、人々はまた龍神のことを弁財天さまといって敬うようにもなりました。

そしてこの娘の化身は、後の世になって龍神さまとか弁財天さまと呼ばれる多くの神さまの大先祖様となったのです。その後、国中には人々の生活の邪魔をする者もいなくなり、樹木も生え穀物も豊かに実るようになってきたので、この国のことを豊葦原瑞穂国(とよあしはらみずほのくに)と呼ぶようになり、人々も、ますます多く住むようになりました。

そのむかし、翁と娘とが静かに暮らしていた一軒家のそばのこの滝は、今や龍神さまとか弁財天さまとして尊敬されている大龍王さまが、最初に修業された故郷なのです。後の人々はこの滝を見て、大龍王さまは、この滝にある大壷穴を住居としていられるに違いないと信じるようになりました。

そこで人々は、この大壷穴のことを竜宮と名づけるようになりました。この龍王さまは、いつもはこの滝の中の竜宮から出て日本全国を飛びまわり、悪い者を懲らしめたり困っている人を助けたりしていますが、一年に一回は、必ずこの竜宮に帰って来られるのだと信じていました。

しかもその時には、この滝で修業していた娘時代と同じように、乙姫の姿をして帰って来られるので、人々は龍王のことを「竜宮の乙姫」とも呼びました。またこの滝の水が、岩と岩との間を白い飛沫をあげながら流れ落ちている姿が、ちょうど、乙姫の着る白布の羽衣を岩の間に引き懸けているのに似ているところから、
この滝は「布引滝」と呼ばれるようになったということです。

(出典:『葺合懐古三千年史』布引滝の乙姫)

日本三大神滝の究極パワースポット【布引の滝】

日本三大神滝の究極パワースポット【布引の滝】
布引の滝(雄滝、夫婦滝、鼓ヶ滝、雌滝)は古来から名勝の地として知られ、歴代の呪術師が集う最強パワースポットの「那智の滝」や『日本三大名瀑』で日光修験道の最高パワースポットの「華厳の滝」と肩を並べる『日本三大神滝』の一つにも選ばれています。

布引の滝という名は、『葺合懐古三千年史』の「布引滝の乙姫」にあるように、滝を落ちる水が大龍王の乙姫の着る白布の羽衣に見えたため付けられたと云われ、布引滝の上流にある大龍寺には、804年に「弘法大師・空海」が当時は命がけで唐に渡る航海の直前に参詣して、大航海中に海の女王に安全を護られ、無事に帰国後に再度大龍寺に参詣したという話から、山号を再度山(ふたたびさん)と呼ばれるようになってます。

平安時代初期からは、在原行平・業平兄弟の布引滝見物を語った『伊勢物語』で一躍有名になり、鎌倉時代から一般的に有名になった那智滝や、江戸時代から多く知られるようになった華厳滝の『日本三大神滝』の中でも最も古くから名称が世に知れ渡ったとされ、『平治物語』には、弘法大師「空海」や大弁財天と非常に縁が深い「宮島の厳島神社」を造営した「平清盛」が布引滝の見物を語られてる等、数多くの貴族や歌人たちがこの地を訪れて多くの名歌も詠まれています。

雄大な海へと流れる【雌滝(めんたき)】

雄大な海へと流れる【雌滝(めんたき)】
布引の滝で駅から一番近い場所にある「雌滝(めんたき)」までは、新幹線のJR新神戸駅から徒歩5分で、映画『すずめの戸締まり』でも有名になった「新神戸駅の建物」の1階に降りて北側に進むと新神戸駅の高架下に「←布引の滝0.4KM」という大きな案内表示がありますので、その順序通り高架下のトンネル進んで坂を上がると、2分程でレンガ造りの「砂子橋(いさごばし)」が見えてきます。

砂子橋を渡ると平坦な道と階段の分岐点があり、案内表示には「左側の平坦な道を100メートルで雌滝」「右の階段を270メートルで雄滝」とありますので、雄滝(おんたき)だけを近道で行きたい方以外は、左側の「布引の滝(雌滝、鼓ヶ滝、夫婦滝、雄滝)」の四つを順序通り見れるハイキングコースを100メートル程進むと雌滝に到着します。

雌滝は写真の奥にある高さ19メートルの滝で、雌滝の周辺には観瀑橋や座って滝を眺められるベンチが設けられ、布引渓流の水は『名水百選』にも選ばれてる「KOBE WATER」として赤道を越えても腐らずに世界を旅する航海士たちに愛される美味しい水として有名ですが、この世界一とも称される浄化された水は大阪湾に流れ、淡路島と鳴門市を挟む鳴門海峡にある『世界三大潮流』で世界一大きい渦潮をガラス越しに展望できる「鳴門の渦の道」のある海へと繋がってます。

水音が鼓の音のように聞こえる【鼓ヶ滝(つつみがだき)】

水音が鼓の音のように聞こえる【鼓ヶ滝(つつみがだき)】
雌滝から鼓ヶ滝(つつみがだき)までは徒歩5分程ですが、鼓ヶ滝、夫婦滝、雄滝までのハイキングコースは急な階段を上る必要がありますので、サンダルやハイヒールではなく、歩きやすく滑りにくい靴で来ることなど、事前の心構えが必要となります。

江戸時代までは、現在の様な雌滝から鼓ヶ滝、夫婦滝、雄滝までの遊歩道や尾根道は整備されておらず、『齋藤拙堂の旅行記』によれば「砂子山に登り、さらに険しい山路を登って茶店のある望瀑台に着いた。滝は正面に見える。岩角をたどって滝壺辺りへ降りると滝の飛沫で着物がびしょ濡れになった。」と記されています。

鼓ヶ滝は「鼓滝」と刻まれた石の先にある高さ8メートルの滝で、多くの人はこの滝の存在に気がつかず通り過ぎてしまう程の見えずらい場所にありますが、滝の水音が鼓の音のように聞こえるから鼓ヶ滝と名付けられたとされ、水が流れる音や鳥のさえずりが聞こえる道の途中には、平安時代から詠み継がれてきた36歌が刻まれた「布引三十六歌碑」が各所で設置されています。

二手の水が合流して寄り添う【夫婦滝(めおとだき)】

二手の水が合流して寄り添う【夫婦滝(めおとだき)】
鼓ヶ滝から5分ほど上ると、雄滝(おんたき)と夫婦滝(めおとだき)がある一番見所のある場所に到着で、「夫婦滝」は雄滝の滝壺にある二手の水が夫婦のように合流して寄り添うように流れてることから名付けられた9メートルの滝で、周辺には、座って滝をゆっくり眺められるベンチや階段の上には多数の祠があります。

1300年以上前の飛鳥時代に「役小角(えんのおづの)」尊称で役行者(えんのぎょうじゃ)が、布引滝で修行中に馬頭観音や不動明王、時には布引の滝に住む弁財天に護られた民話の

今からおよそ千三百年も昔のことです。布引の滝に一人の修行者がやって来ました。里人の質問に、行者は答えて言いました。

「わしは、役行者じゃ。これまで箕面(みのお)の滝ではげしい行をしておったが、それを終え、これからはこの布引の滝で、滝に打たれたり大護摩を焚いたりして『ゆか大法』という一段と厳しい行をするつもりじゃ」

役行者が行を始めて二十一日目のことでした。滝の落ちる谷間一帯に何とも言えないいい香りがただよい、不思議な光が差し始め、突然、滝の中から馬頭観音が姿を現わされました。

「行者よ、よく厳しい行に耐えられた。まもなく、あなたは大きな力を得られるであろう」行者は少しの間、ボウッとしていました。が、ふと気が付くと、行者のまわりにいろいろな魔物が現われてきて、しきりに行を妨げたり、もっと楽な他のことをするように行者を誘いかけたりしました。

しかし、行者の意思は強く、前よりはげしく一心に滝に打たれていました。するとやがて滝の水の中から、おそろしい顔かたちをした不動明王が現われて、行者の周囲に集まってきていたモノノ怪を追い払ってくれました。時には滝に住む弁天さまが現われて、行者を護ってくれました。

ついに修行を終えて、何でも自由自在になる不思議な力を身につけた役行者は、修行中に現われた馬頭観音や不動明王の像を刻んで、滝の東の谷に祀りました。これが滝勝寺の起こりだということです。

(出典:『役行者と布引の滝』)

『役行者と布引の滝』があり、雄滝と夫婦滝のある場所の近くには、「白々龍神(しららりゅうじん)」という神変大菩薩「役行者」と縁が深い祠もあることから、この周辺が古来から重要な霊場(パワースポット)であったのが分かります。

その後の歴史には、明治元年に神戸港が開港してから、英人マーレーの『旅行の案内記』で世界中に紹介されて、神戸を訪れる外国人達の第一の観光地になり、明治5年から「布引遊園地(現在の公園)」が布引滝周辺に作られ、一時は居留地の外国人に布引の地を占領される危機などもあり、明治33年に日本最古の重力式コンクリートダムの「五本松堰堤」が建造されてからは、布引の滝の水量が激減してしまい、負のエネルギーも蔓延してしまいました。

5つの甌穴がある竜宮【雄滝(おんたき)】

5つの甌穴がある竜宮【雄滝(おんたき)】
雄滝(おんたき)は、落差が43メートル、深さは6.6メートルの雄大な滝で、上空から見ると5段に分かれて落下してるのが確認でき、各5つの段に甌穴(おうけつ)があり、甌穴とは、専門家の実地調査でも証認されてる急流を流れ落ちる水と岩石が数十万年かけて作り上げた世界的にも稀な自然現象で、上段から滝姫宮、白龍宮、白鬚宮、白滝宮、五瀧宮と呼ばれ、甌穴の中で丸くなった石が極まれに出水時に出てきたものを「竜宮石」として重宝され、『竜宮の乙姫伝説』と共に神格化されています。

布引の滝のある六甲山は昔は「ムコ」と呼ばれ、『万葉集』には牟古山、務古山、六児山と記され、神戸市の灘区六甲山町にある「六甲比命大善神社(ろっこうひめだいぜんじんじゃ)」には、縄文人が積み上げたとされる巨石の磐座(いわくら)をご神体として、祭神は六甲比命大善神(大弁財天・吉祥天)=「撞賢木厳魂天疎向津姫(瀬織津姫・向津姫)」で、縄文の女神「瀬織津姫(セヲリツヒメ)」の総本宮と位置づけられています。

現在は文明の急発展によって見えずらくなってしまった「天」にある大宇宙、「地」にある山や滝、石や木などの全ての自然の大切さ、そして「人」を表す自身の中にある創造主である小宇宙(ミクロコスモス)に多くの人が氣付いた時に、平和と豊さをもたらし海を照らす「竜宮の乙姫」が再び神の戸を開いて姿を現すのかもしれません。

旅行の達人の観光ガイド

布引の滝の観光所要時間は「1時間以内」で楽しむことができるので、観光に時間がない人にもオススメのスポットです。

布引の滝の雄滝(おんたき)の周辺には、「布引雄滝茶屋」や「徳光院」があり、布引雄滝茶屋(おんたき茶屋)は、創業100年以上の歴史ある茶屋で、メニューには、布引ラーメンや鍋うどん、おでんや湯豆腐、事前予約のみですが「おんたき御膳」等を食べながら滝を眺めることもできます。

近場にある他の観光スポットは、「布引雄滝茶屋」からハイキングコースで更に上に進むと「猿のかずら橋」や「谷川橋」を渡ることができて、布引貯水池が満水の時にのみ出現する幻の5つ目の滝とも呼ばれる「五本松かくれ滝」や『ダム湖百選』にも選ばれてる「布引ダム・布引貯水池(五本松堰堤)」など、ハイキングコースとしても見どころが多くある観光スポットです。

布引の滝の観光情報

スポット名】布引の滝(雄滝、夫婦滝、鼓ヶ滝、雌滝)
住所】兵庫県神戸市中央区葺合町
交通アクセス
■雌滝(めんたき)まではJR新神戸駅から徒歩5分
雄滝(おんたき)まではJR新神戸駅から徒歩15分
料金】無料
営業時間】年中無休
ホームページ公式サイト

布引の滝の地図情報

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